■財産債務調書
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さて、今日の話題はどんなことでしょうか?
今回は、今年の確定申告から提出が必要になる「財産債務調書」についてです。
今年から必要な書類なんですね?
今までは「財産及び債務の明細書」。これは年間所得金額が2千万円超の人が対象でした。これは、前回で廃止です。
「財産債務調書」は、所得2千万円超に加えて、3億円以上の財産か1億円以上の有価証券等を持つ方が対象です。
インセンティブとペナルティが用意されました。
インセンティブは、財産債務調書を提出した場合には、記載があるもので相続税等の申告漏れが生じたときのペナルティについて、5%軽減されます。
ペナルティは、記載がない財産に関する相続税等の申告漏れに係るペナルティについて、5%加重されます。
実際に始まってみて、大変だな~と感じる部分、どんな点でしょうか?
簡単に言えば、あなたが持っている財産と債務を書いて提出して下さいっていうもの。マンション、預金、株、車、家具・・・。各々に時価を付して完成させるのは、大変な作業です。今、僕の目の前にあるこのマイクの時価がいくらですかと問われて即答できる人はなかなかいないと思います。時価を把握するって簡単なことではないのです。
では何故、このような手間のかかる制度が始まったのでしょうか?
国税庁が、多国籍企業の国際的な租税回避および富裕層の国際的な租税回避への対処の重要性を感じているからです。
グーグルの海外利益にかかる実効税率が、2~3%だったころがあります。日本の法人の実効税率が30%を超えていることを考えると驚異的な数値です。
軽課税国に会社を作り、アイルランドとオランダ間の租税条約を活用し、複数の国をまたぐ取引により複雑だけど合法の節税策によって作りだされた租税回避です。この手法は、アマゾン、ファイスブックなど巨大ネット事業者もまねをし、新たな課税問題として欧州を中心に賑わったことがあります。
これを踏まえてOECD(経済協力開発機構)も多国籍企業の租税回避に対処する国際協調体制の提言を発表しました。
国際的な流れの一つなのすね?
富裕層への取り組みとして、昨年から「国外財産調書」の提出がはじまっていて海外財産については1年先行で対応が開始されていました。未提出者に対して、適正に提出を促しているようです。「国外財産調書」を作った以上、同様の事項の記載を要する「財産債務調書」を作り、国際的な租税回避への対応のみならず、所得税・相続税の申告の適正性の確保にもつながっています。
富裕層のコンプライアンス向上に向けた取り組みなのですね。
国税庁が「適正かつ公平な税務行政の推進」という使命を持って作った制度です。自分の財産をこの機会にしっかり把握するという気持ちを持って作成すべきものが「財産債務調書」です。生前に「相続税の申告書」を作るつもりでいて欲しいです。