カテゴリー別アーカイブ: 法人税法 税理士試験

■法人税法 第63回 第一問 問1 解明のために

1.損害賠償金を題材に1。
まずは、第63回の第一問を対応するためには、第60回の第二問の解明からになります。下記をまず突破してください。
B研究所では、平成22年6月3日に現金20,000,000円が紛失している事実が発覚した。調査の結果、研究員であり研究費に関する現金出納の責任者であるAが同年4月から5月にかけて持ち出したことが明らかとなったため、甲社ではこの金額を雑損失に計上した。甲社はAに対して責任を問い、その弁済を求めたところ、Aは謝罪し、弁済する意向を示して辞職した。その後、Aは他の研究機関に職を得ているが、十分な待遇を得られず、全額の弁済は困難な状況にある。甲社は弁護士を通じてAと交渉中であり、持ち出した金額の60%相当額を年賦にて支払うとの合意が得られる見込みであるが、当期末までに確定していない。

 いわゆる横領です。

損失/現金 20,000,000円
この例では12,000,000円が返済されることになるでしょう。8,000,000円は戻ってこないです。しかも分割で・・・・。
通達を確認しましょう。

 (損害賠償金等の帰属の時期)
2-1-43
他の者から支払を受ける損害賠償金(債務の履行遅滞による損害金を含む。以下2-1-43において同じ。)の額は、その支払を受けるべきことが確定した日の属する事業年度の益金の額に算入するのであるが、法人がその損害賠償金の額について実際に支払を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入している場合には、これを認める。(昭55年直法2-8「六」により追加、平12年課法2-7「二」により改正)
(注) 当該損害賠償金の請求の基因となった損害に係る損失の額は、保険金又は共済金により補てんされる部分の金額を除き、その損害の発生した日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。

この通達で、収益計上を、翌期以降にできないでしょうか?
結論から言えば、出だしを検討しなければなりません。この通達が適用できるのは、「他の者」なのです。従業員については、安易に適用できないのです。
裁決例を1つ紹介します。

●裁決例
法人税法上、当該事業年度の収益の額は、一般に公正妥当な会計処理の基準に従って計算すべきものとされているから、これによれば、収益は、その実現があった時、すなわち、その収入すべき権利が確定したときの属する事業年度の益金に計上すべきものと考えられる。
この権利の確定とは、法律上その権利を行使することができるようになったことをいうものと解されるところ、横領等の不法行為による損害賠償請求権についても、法律上権利行使が可能となったとき、すなわち、不法行為によって損害賠償請求権が発生したときに、その権利が確定し、これを当該事業年度の収益に計上すべきと解される。
したがって、本件における損害賠償請求権は、従業員の不法行為が行われた本件各事業年度において発生し、その権利が確定することとなる。
また、A元所長は、本件出張所の業務全般の管理及び仕入れに関する責任者という請求人の主要な地位にあり、従業員の行った本件取引は、請求人の行為と同一視でき、法人税基本通達2-1-43を適用する前提となる「他の者」に該当するとみることはできず、当該通達の適用は認められないことから、本件においては、収益計上時期を損害賠償請求権が発生し、その権利が確定した本件各事業年度とすることが妥当である。
(平21. 4. 6 東裁(法・諸)平20-152)

現金責任者ではあるものの、もはや辞めていて、甲社と同一と言えるか?言えないか?
他の者と言えるか?言えないか?
裁決例は、「業務全般の管理及び仕入れに関する責任者という請求人の主要な地位」にいたと主張して、辞めた後でも、「他の者」には認定しませんでした。
また、判例でも経理部長で通達が使えない旨の判例もでています。
次に、雑損失で大丈夫か?給与課税をうけないのか?
法人がその社員の横領を黙示に承認していると見られる場合には、社員に対する給与認定もありえます。法人自体が当該行為を承認せず、横領という犯罪行為として対応している場合には、給与認定はないことになります。
被害者として、当該横領した社員に対して損害賠償請求の訴訟等(本問題はここまでは、していません)を提起しているような事実関係の下では給与の認定はされないことになります。

なぜ、ここまで試験に出題されるかと言えば、問題点を少なくても保持しているからなのです。
実務上、試験解答上も注意して活用しなければなりませんが、学術上の意見も押さえておいて、両方の意見を理解したうえで現状の処理を決定していく力が必要です。ひとりよがりな主張では税務のサポートはできません。
ここで、租税学の話になりますが、 「横領等の行為により受けた損害額に対して取得した損害賠償請求権の収益の認識は、その横領者である役員又は使用人の置かれた状況、損害賠償金の支払可能性等に照らして、「法基通2-1-43」による異時両建説による税務処理を課税実務(課税当局)が積極的に取り入れて運用すべきであると考える。それが納税者の租税負担能力に応じた課税関係が形成されるといえるからである。」 という租税学者は、多いのです。税務当局は、現状消極的ですが。

不法行為に係る損害賠償金等の帰属の時期-法人の役員等による横領等を中心に

1.問題の所在
私法上、他人の不法行為により損害を受けた場合には、その損害の発生と同時に損害賠償請求権を取得するものと解されている。そして、法人の課税所得の計算においては、このような不法行為により被った損害に係る損失の損金算入時期及び損害賠償請求権の益金算入時期について、学説上、同時両建説及び異時両建説が存する。
法人税法上、いずれの説を採るべきかについては、最高裁昭和43年10月17日判決(裁判集民事92号607頁)において、法人の代表取締役の横領行為によって生じた損失とこれに対する損害賠償請求権の計上時期が争われた事件について、原則として同時両建説によるものとの判断が示され、一応の決着をみたところである。一方、その後の課税実務においては、昭和55年の法人税基本通達改正に際して、その相手方がその法人の役員又は使用人以外の「他の者」である場合には、異時両建説を採用し現在に至っている。
この点について、上記の通達改正の前後から、不法行為の相手方が当該法人の役員又は使用人であっても異時両建説により損益計上を行うべきとの指摘をする学者、実務家が見受けられ、現在、学説上は同時両建説と異時両建説とが拮抗しているといわれている。また、裁判例においては、これまで前掲最高裁判決に沿った判断が続いていたところ、最近において、法人の経理部長の横領行為が税務調査で発覚した事件について、損害賠償請求権の益金算入時期をその行使が事実上可能となった時(法人がその損害の発生と加害者を知った時)とする判決も出されているところである。
これまで学説上様々な議論がなされ、また、裁判所の判断においても下級審ではあるが新たな判断が出されているのは、課税当局が法人税法上の取扱いについて必ずしも具体的な指針を示していないことも要因の一つと考える。課税実務においては、法人が自己の役員又は使用人の不法行為により損失を被る事例は少なからず見受けられるところであり、この際、最近における議論を踏まえながら、いかなる取扱いが妥当するのか、研究しておく必要がある。

2.同時両建説・異時両建説
 同時両建説は、他人の不法行為により損害を受けた場合にはその損害の発生と同時に損害賠償請求権を取得するという私法上の法的基準と合致させ、また、不法行為による損失と損害賠償請求権が同一の原因から生ずるものであることから、損金と益金とを同一事業年度に計上すべし、との考え方によるものである。しかし、この考え方に対しては、損失確定説と同様に、法人税法22条2項及び3項の文理上からは、常に同時両建説が妥当するとの考え方には疑問を呈せざるを得ない。
異時両建説は、不法行為を受けたことにより取得する損害賠償請求権はいわば観念的・抽象的な債権であり、多くの場合回収が困難なものであることから、収益として確定したものではなく担税力の観点からすれば所得を構成するものではない、といった考え方によるものである。しかし、損害賠償請求権といえども金銭債権であることは疑いのないところであり、税法上、他の金銭債権と異なる取扱いをなす規定が存しない以上、このような考え方にも疑問なしとしない。また、不法行為による損害といっても、その内容は様々なものがあり、特に、横領等の加害者がその法人の役員や主要なポストに就いている使用人である場合には、課税当局の主張するように、その行為が個人的なものなのかどうかを峻別する必要もある。実務においては、法人の役員又は使用人による横領等の不法行為は、不幸にして、まま見受けられるところである。

3.現行取扱いの概要
法人税基本通達においては、損害賠償金の益金算入時期につき、その相手方が「他の者」である場合には、その支払を受けるべきことが確定した日の属する事業年度又は実際に支払を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入することとしている(法基通2-1-43)。
課税当局が、このような異時両建説による処理を認めているのは、損害賠償金といってもその原因は多岐にわたり相手方に損害賠償の責任があるかどうか当事者間に争いのあることが少なくないこと等から確定的な収益といえるか疑問なしとしない面があることがその理由であると説明されている。
他方、その相手方が「他の者」に当たらない場合、すなわちその法人の役員又は使用人である場合には、通達上その取扱いは明らかにされておらず、上記通達の趣旨解説において「例えば、役員の場合にはその行為が個人的なものなのか、それとも法人としてのものなのか峻別しにくいケースが多いことから本通達をそのまま適用することには問題がある場合が多い。」とし、「役員又は使用人に対する損害賠償請求については本通達の取扱いを適用せず、個々の事案の実態に基づいて処理することとされている。」と記述されるにとどまっている。

4.現行取扱い及び学説からみた問題点
現行の取扱い及び学説については、課税実務上の観点からは、次のような問題点を指摘できる。
⑴ 課税当局が示している現行の取扱いは、損害賠償請求の相手方が「他の者」である場合とその法人の役員又 は使用人である場合との取扱いの差異について、それぞれ別個の観点から説明されている上、相手方が後者の場合には、ケース・バイ・ケースで処理すべきとの説明は、実務上の具体的な指針を示しているとは言い難いと考える。

⑵ 不法行為による損害といっても、その内容は様々なものがあり、学説上のいずれの説を採ったとしても、すべてのケースについて一律に適用することは困難であると考える。特に、横領等の加害者がその法人の役員や主要なポストに就いている使用人である場合には、課税当局の主張するように、その行為が個人的なものなのかどうかを峻別する必要もある。

⑶ 最近の学者の論調では異時両建説が有力視されるが、その論拠として、被害発生事業年度においては、損害が生じている反面、その回復のための資金流入がないことなどから、納税者に「酷である」として、「宥恕的取扱い」を採るべきであるとの主張も多い。

以上のような問題点からすれば、今後の取扱いを考察するに当たっては、現行の加害者が役員又は使用人である場合と他の者である場合といった区分のみによるのではなく、租税法の立場からの法的根拠を整理すべきと考える。この点、現在の学説上拮抗しているといわれている同時両建説と異時両建説の相違は、結局は損害賠償請求権の益金算入時期であることからすると、法人税法における益金の基本的な認識基準である権利確定主義の観点からの検討が、適切な取扱いを考察する上で不可欠となろう。

5.収益の年度帰属と権利確定主義
法人税法においては、益金の額に算入する収益の額の年度帰属について、原則として、同法22条4項により発生主義のうち権利確定主義によるものと解されている。そして、この場合の「権利の確定」の意義については、唯一絶対の基準があるものではなく、通説、判例からは、これを権利の「発生」と同一ではなく、権利発生後一定の事情が加わって権利実現の可能性が増大したことを客観的に認識することができるようになったときを意味するものとしており、具体的には各種の取引ごとにその特質を検討して判断することとなるとされている。
このように、「権利の確定」がいつであるかについては、それは多義的であり唯一絶対の基準があるものではないが、かといって単純に個別判断によって決するものということにもならない。すなわち、私法上の法律関係に基づいてその「発生」がいつであるかについては十分に認識が可能であって、それにその権利の内容、すなわちその相手方、金額その他権利の内容、範囲が明らかであるかどうかで「確定」しているかどうかを判定することができるものと考えられるのである。

6.法人税基本通達2-1-43の妥当性
権利確定主義からの検討からすると、不法行為の相手方が「他の者」である場合に、損害賠償請求権の益金算入時期につき、一律に異時両建て(ないしは現金基準)による処理を認めている現行の法人税基本通達の取扱いについて、その妥当性に疑問が生ずることとなる。しかしながら、不法行為に係る損害賠償請求権は、突発的、偶発的に取得する債権であるところ、特に相手方が他の者である場合には、その身元や損害の金額その他権利の内容、範囲が明らかでないことが多いであろうから、その場合、その権利が確定しているとはみられない。したがって、相手方が他の者である場合に、被害発生事業年度において損害賠償請求権の益金算入を求めないとしても、権利確定主義の観点からも妥当した取扱いであると考える。

7.結論
 法人が支払を受ける損害賠償金に係る損害賠償請求権の益金算入については、学説上の同時両建説、異時両建説に拘泥することなく、その損害と同時に取得する当該損害賠償請求権が、権利確定主義の観点から、それが「発生」したにとどまるものなのか、「確定」しているものなのかに応じて益金計上時期が決せられることが相当である。
すなわち、法人が損害を受け、相手方に損害賠償を請求する場合において、その損害賠償請求権の相手方が特定され損害額が算定されるなど権利の内容、範囲が確定した時点で益金に算入すべきものと考える。損害賠償請求権が損害の発生と同時に「確定」している場合にはその損害が生じた事業年度において当該損害賠償請求権を益金算入(結果として同時両建てとなる。)し、損害の発生時には損害賠償請求権は権利の「発生」にとどまる場合には当該損害の損金算入が先行する(結果として異時両建てとなる。)こととなろう。
そして、法人の役員又は使用人による不法行為による損失とこれに係る損害賠償請求権については、次のように取り扱うべきと考える。

⑴ その損害がその法人の役員又は使用人による横領による損失であるような場合には、通常、損害賠償請求権はその時において権利が「確定」したものということができるのであるから、被害発生事業年度において、当該損失の額を損金の額に算入するとともに、損害賠償請求権を益金の額に算入する。
⑵ 相手方がその法人の役員又は使用人であっても、権利の帰属を巡る損害賠償請求や交通事故による損害賠
償請求のように、私法上の権利の取得の時点で、その権利が「確定」していない場合には、それが確定した時点
で損害賠償請求権を益金の額に算入する。

法人税法第63回第一問の問題です。今までのものを読み終えてから読まないと意図はつかめないかもしれません。

製造業を営む内国法人である株式会社甲((以下「甲社」という。) は、工場建物及びその敷地である土地の取得(工場建物の建設費用25,000,000円、敷地である土地の購入価格20,000,000円)に充てるため、平成12年中に乙銀行から借り入れを行った。その借り入れに際し、甲社との間に資本関係のない株式会社丙 (以下「丙社」という。) は、甲社からの委託を受けて、その保有する上場有価証券を担保として乙銀行に差し入れた。なお、当該上場有価証券の担保差し入.れ時の時価は12,000,000円、丙社の帳簿価額は10,000,000円であった
その後、甲社の借入金返済が滞ったため、乙銀行は担保権を行使し、平成25年5月10日にその上場有価証券が売却され、売却代金 (譲渡対価7,300,000円) が債務の一部の弁済に充当された。
以上の事実関係の下で、丙社の当期 (平成25年4月1日から平成26年3月31日までの事業年度をいう。) に行うべき税務上の処理はどのようになるか。その法的な理由・考え方を、仕訳を示しながら簡潔に説明しなさい。
また、次の①から③までに掲げる事実が、丙社の翌期 (平成26年4月1日から平成27年3月31日までの事業年度をいう。) 中に生じた場合、丙社においては、それぞれ税務上どのような処理が必要と考えられるか。考えられる処理案を、その前提となる事実関係を適宜補いながら場合分けして示した上で、その処理の法的な理由・考え方を簡潔に説明しなさい。
なお、解答に当たっては、民事上の遅延利息は考慮する必要はない。
① 甲社が丙社に対して求償分を現金で支払った場合
② 甲社が丙社に対しその工場建物及びその敷地を提供した場合
③ 丙社が甲社に対して書面をもって、求償分を支払わなくとも良い旨の通知を行った場合

1.他の者となりえるか

資本関係がないと書かれていますが、第三者になりえるでしょうか?
他の者になりえるでしょうか?
他の者の保証人になりますか?
保証人になるという段階で何らかの特殊関係があると見る方が自然です。
租税特別措置法ですが、国外関連者の定義があります。租税特別措置法だけに細かく実態に応じて定義されています。

■ 国外関連者との取引に係る課税の特例)
第66条の4
法人が、昭和61年4月1日以後に開始する各事業年度において、当該法人に係る
国外関連者
(外国法人で、当該法人との間にいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式又は出資
(当該他方の法人が有する自己の株式又は出資を除く。)
の総数又は総額の100分の50以上の数又は金額の株式又は出資を直接又は間接に保有する関係その他の政令で定める特殊の関係)
(次項及び第5項において「特殊の関係」という。)
のあるものをいう。以下この条において同じ。)
との間で資産の販売、資産の購入、役務の提供その他の取引を行つた場合に、当該取引
(当該国外関連者が法人税法第141条第1号から第3号までに掲げる外国法人のいずれに該当するかに応じ、当該国外関連者のこれらの号
に掲げる国内源泉所得に係る取引のうち政令で定めるものを除く。以下この条において「国外関連取引」という。)
につき、当該法人が当該国外関連者から支払を受ける対価の額が独立企業間価格に満たないとき、又は当該法人が当該国外関連者に支払う対価の額が独立企業間価格を超えるときは、当該法人の当該事業年度の所得に係る同法その他法人税に関する法令の規定の適用については、当該国外関連取引は、独立企業間価格で行われたものとみなす。

●(国外関連者との取引に係る課税の特例)
第39条の12
法第66条の4第1項 に規定する政令で定める特殊の関係は、次に掲げる関係とする。
一 二の法人のいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式又は出資(自己が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額(以下第3項までにおいて「発行済株式等」という。)の100分の50以上の数又は金額の株式又は出資を直接又は間接に保有する関係
二 二の法人が同一の者(当該者が個人である場合には、当該個人及びこれと法人税法第2条第10号 に規定する政令で定める特殊の関係のある個人。第5号において同じ。)によつてそれぞれその発行済株式等の100分の50以上の数又は金額の株式又は出資を直接又は間接に保有される場合における当該二の法人の関係(前号に掲げる関係に該当するものを除く。)
三 次に掲げる事実その他これに類する事実(次号及び第5号において「特定事実」という。)が存在することにより二の法人のいずれか一方の法人が他方の法人の事業の方針の全部又は一部につき実質的に決定できる関係(前2号に掲げる関係に該当するものを除く。)
イ 当該他方の法人の役員の2分の1以上又は代表する権限を有する役員が、当該一方の法人の役員若しくは使用人を兼務している者又は当該一方の法人の役員若しくは使用人であつた者であること。
ロ 当該他方の法人がその事業活動の相当部分を当該一方の法人との取引に依存して行つていること。
ハ 当該他方の法人がその事業活動に必要とされる資金の相当部分を当該一方の法人からの借入れにより、又は当該一方の法人の保証を受けて調達していること。

(損害賠償金等の帰属の時期)
2-1-43
他の者から支払を受ける損害賠償金(債務の履行遅滞による損害金を含む。以下2-1-43において同じ。)の額は、その支払を受けるべきことが確定した日の属する事業年度の益金の額に算入するのであるが、法人がその損害賠償金の額について実際に支払を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入している場合には、これを認める。(昭55年直法2-8「六」により追加、平12年課法2-7「二」により改正)
(注) 当該損害賠償金の請求の基因となった損害に係る損失の額は、保険金又は共済金により補てんされる部分の金額を除き、その損害の発 生した日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。

本通達の適用に当たり、「他の者」とは社外の第三者のことであり、法人の役員や使用人はこれに該当しないものとされています。グループ内法人も「他の者」には該当しないものと考えられます。
本通達では「他の者」の不法行為による損失については,その損失が生じた事業年度の損金に算入し、損害賠償請求権についでは相手方との合意や訴訟等によりその額が確定した事業年度の益金に算入するという「異時両建説」を認め、また現金主義による処理も可能としています。これは損害賠償請求の相手方が他の者である場合は、相手方の資力が明らかでなく、現実的に回収が困難なことが多いことが理由となっています。
一方、法人の内部の者、すなわち役員や使用人による不法行為による損失の計上時期や損害賠償金等の帰属の時期についでは明らかにされていませんが、これは不法行為の当事者が法人内部の者である場合には、内部関係であるため、損害賠償請求といっても、本通達が想定する前提事実とはかなり事実関係が異なることも少なくなく、とりわけ同族会社のオーナー役員やその家族使用人等による不正行為の場合には、その内容や決着のつけ方などを一律に判断できないことも少なくありません。
このため、本通達をそのまま機械的に適用することとすれば、課税上の弊害も考えられますので、結局、個々の事案に応じて処理することとしているのです。
このことは、グループ内の法人間における損害賠償請求問題についでも同様に解されています。
他の者にはなりえないと考える方がいいかもしれません。保証人になることの関係性を考えてみてください。明確ではないのも事実ですが他の者ではない以上、相手方の資力や状況を把握することもできるはずです。
同時両建説での収益を計上する必要があります。この問題で求めている解釈です。

 
弁済額はいくらになりますか?
普通に考えてください。時価変動する有価証券を担保として提供するときに、12,000,000円の価値がありました。
お金にするなら、12,000,000円になるわけです。もし、保証債務の履行として処分された場合に、契約する際に、弁償額をいくらに設定しますか?
同じ、有価証券を返してくださいということもなくはないでしょうが、契約を結ぶ際の時価の12,000,000円を弁償してもらうと考えるのが普通の感覚のはずです。

同時両建説の仕訳


未収入金         12,000,000円 差入有価証券            10,000,000円
損害賠償金収入         2,000,000円
 


参考

異時両建説の仕訳


未収入金         7,300,000円 差入有価証券            10,000,000円
 有価証券譲渡損  2,700,000円

① 甲社が丙社に対して求償分を現金で支払った場合

【同時両建説で処理しているか異時両建説で処理しているか】
【身内なのか身内でないのか】

同時両建説であるならすでに収益計上をしているので、現金を受取った場合に課税所得に影響することありません。異時両建説であるなら現金で受取った際に収益を計上していく必要があります。

●他法律参考 

【保証債務を履行するために土地建物などを売ったとき】

1 特例のあらまし
保証債務を履行するために土地建物などを売った場合には、所得がなかったものとする特例があります。
保証債務の履行とは、本来の債務者が債務を弁済しないときに保証人などが肩代りをして、その債務を弁済することをいいます。
保証債務の履行に当てはまる主なものは次の四つです。
⑴ 保証人、連帯保証人として債務を弁済した場合
⑵ 連帯債務者として他の連帯債務者の債務を弁済した場合
⑶ 身元保証人として債務を弁済した場合
⑷ 他人の債務を担保するために、抵当権などを設定した人がその債務を弁済したり、抵当権などを実行された場合

2 特例の要件
この特例を受けるには、次の三つの要件すべてに当てはまることが必要です。
⑴ 本来の債務者が既に債務を弁済できない状態であるときに、債務の保証をしたものでないこと
⑵ 保証債務を履行するために土地建物などを売っていること
⑶ 履行をした債務の全額又は一部の金額が、本来の債務者から回収できなくなったこと
この回収できなくなったこととは、本来の債務者が資力を失っているなど、債務の弁済能力がないため、将来的にも回収できない場合をいいます。
例えば、本来の債務者が破産をしていたり、失そうをしているなどの場合がこれに当たります。
したがって、本来の債務者に弁済能力があるのに、債権の回収をしないときは、この特例は受けられません。

所得税法
(資産の譲渡代金が回収不能となつた場合等の所得計算の特例)
第64条
その年分の各種所得の金額(事業所得の金額を除く。以下この項において同じ。)の計算の基礎となる収入金額若しくは総収入金額(不動産所得又は山林所得を生ずべき事業から生じたものを除く。以下この項において同じ。)の全部若しくは一部を回収することができないこととなつた場合又は政令で定める事由により当該収入金額若しくは総収入金額の全部若しくは一部を返還すべきこととなつた場合には、政令で定めるところにより、当該各種所得の金額の合計額のうち、その回収することができないこととなつた金額又は返還すべきこととなつた金額に対応する部分の金額は、当該各種所得の金額の計算上、なかつたものとみなす。

2 保証債務を履行するため資産(第33条第2項第一号(譲渡所得に含まれない所得)の規定に該当するものを除く。)の譲渡(同条第1項に規定する政令で定める行為を含む。)があつた場合において、その履行に伴う求償権の全部又は一部を行使することができないこととなつたときは、その行使することができないこととなつた金額(不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を除く。)を前項に規定する回収することができないこととなつた金額とみなして、同項の規定を適用する。

② 甲社が丙社に対しその工場建物及びその敷地を提供した場合

【客観的な処理で時価を測定するのか取引上の合意が時価になるのか】
【身内なのか身内でないのか】
実際問題は、敷地には担保がついているでしょう。
他の者ではない第三者でないなら客観的な時価をだしその差額の清算金をス支払わなければ、寄附金、受贈益の課税関係が発生します。身内だからこそ(グループだからこそ)現金化せずに資産を受け入れることが、可能なのかもしれません。
はじめの契約の段階で、保証債務を履行した際に工場建物及び敷地を弁済するということになっていれば、第三者取引である以上そこには時価が成立することになります。

●他法律参考
【課税標準】
  課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は、課税資産の譲渡等の対価の額、すなわち、資産の譲渡、資産の貸付けや役務の提供について受け取る金額又は受け取るべき金額です。
この金額は、金銭で受け取るものに限られず、金銭以外の物や権利その他経済的利益の額など、対価として受け取るすべてのものが含まれます。
なお、この課税標準となる対価の額には、消費税相当額及び地方消費税相当額は含まれません。
このように、課税資産の譲渡等の課税標準は、当事者間で授受することとした対価の額となりますが、次の場合には、次の金額が課税標準になります。
⑴ 法人が自社商品などをその役員に贈与したり、著しく低い価額で譲渡した場合・・・・その自社商品の時価
⑵ 個人事業者が、自分が販売する商品などを家庭で使用したり消費した場合・・・・その商品などの時価
⑶ 代物弁済をした場合・・・・代物弁済により消滅する債務の額
⑷ 資産を交換した場合・・・・交換により取得する物品の時価(交換差金を受け取る場合はその金額を加算した金額
とし、交換差金を支払う場合はその金額を控除した金額となります。)

消費税法施行令
(課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準の額)
第45条
法第28条第1項 に規定する金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の額は、当該物若しくは権利を取得し、又は当該利益を享受する時における価額とする。
2 次の各号に掲げる行為に該当するものの対価の額は、当該各号に定める金額とする。
一  代物弁済による資産の譲渡 当該代物弁済により消滅する債務の額(当該代物弁済により譲渡される資産の価
額が当該債務の額を超える額に相当する金額につき支払を受ける場合は、当該支払を受ける金額を加算した金額)に相当する金額

③ 丙社が甲社に対して書面をもって、求償分を支払わなくとも良い旨の通知を行った場合

【合理的な再建計画・整理計画があるのかないのか、相手に弁済能力がないのかあるのか】
【身内なのか身内でないのか】

 企業が寄附をする際、通常指定寄附金や特定公益増進法人等に対する寄附金に該当するものに寄附することが多くまた、企業の体力を見て寄附というもの行っていくわけです。
寄附金課税を行うことは非常にまれなのです。
基本は身内の取引は適正な時価を算出して行うということが大前提なのです。
身内の取引であっても、合理的な再建計画や整理計画がありより大きな損害を回避するために社会通念上相当であるなら、寄附金課税が行われない場合もあります。安易に適用はできませんが、状況を見極める必要はあります。
第三者であっても寄附金課税が行われる場合があります。それは、債権放棄です。債権放棄は安易にはしてはいけないということを、もっといえば、不良債権を出さない処理をしっかり指導していくことが私たちの大切な業務のひとつなのです。
金銭債権を貸倒処理する際には、債務超過の状態が相当期間継続を立証し、その金銭債権の弁済を受けることができないことをも立証し、書面により債務免除額を明らかにしていく必要があります。

http://www.nta.go.jp/taxanswer/report3/faq5280-27.pdf