税理士試験 消費税法 第70回 予想

消費税法が受かりにくい。何度やっても相性が悪い。
よく耳にしてきました。

解決策は非常に簡単です。
結論から言えば、

知っている基礎知識を具体化する。
具体化するために調べて納得する習慣を身に着ける。

つまり
活用できる知識を身に着けていけばよいのです。

 

下記事項を参考にして、求められていることをしっかり感じ取れれば、必ず突破口は見つかります。
消費税法 第64回の第一問の問2(3)を見たとき、消費税法令を理解できているか鋭い問題と感じるとともに実務上の問題点を見事に出題して税理士の素養があるかどうかをきっちり試した問題だと感じました。
何よりも、具体化されていない知識は意味がないという意図で出題されています。

 

問題
当法人は、特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人であり、特別養護老人ホームに入所する要介護者に対する介護福祉サービスを行っています。
当法人は、この老人ホームの入所者に対して食事を提供するために調理業務を外部業者に委託していますが、この委託業務について、消費税法令の適用関係はどのようになりますか。

 

早速見ていきましょう。
「介護保険法に基づく保険給付の対象となる居宅サービス、施設サービスなど」
たいていの受験生は暗記していると思われる文言です。
暗記をしているけど、具体化ができていないのです。

「介護保険法とはどういう法律なのか?」
「調理業務は保険給付の対象となるのか?」

 

当たり前のことなのですが、暗記のみの方にはすごく難しく感じたかもしれません。
インターネットで、介護保険法の第一条を見てみる。介護保険法に検索をかけ保険給付を調べてみる。他、インターネットで介護保険法、保険給付、調理業務を調べてみる。
生きた知識を作りたいと思う気持ちが大切なのです。それこそが、知識をベースに生きていく税理士としての素養につながっていくのです。

 

「税務」、言い換えれば「税の実務」は、お遊びではないのです。税金は、企業の大切なお金を公益性、民主主義を支えていくために納得して支払ってもらうものなのです。税金の大切さをしっかりと伝えられるのも税理士の資質なのです。
具体化がされていない誤解答例を2つ記載します。

誤解答例1

委託業務に係る役務の提供は、社会福祉法人に対して行われるものであるから、非課税の規定により消費税が課されないものではないため、国内における課税仕入れに該当し、仕入税額控除の対象となる。

 

だめな理由を列挙します。

・主体が外部業者からいきなり当法人にかわり説明力不足。
・「から」「ため」の関係に論理性がない。
・調理業務に言及がない。
・仕入税額控除は、本設問の中心テーマではない。設問は、委託業務の支払いについて問われている問題ではない。

 

誤解答例2

委託業務に係る支出は国内における課税仕入れに該当し、仕入れに係る消費税額の控除の対象になる。
なお、介護福祉サービスは、非課税取引に該当するため、当該非課税取引のための課税仕入れは、個別対応方式により仕入れに係る消費税額を計算する場合には、その他の資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れとして区分され、当該課税仕入れ等の税額は控除されない。
また、一括比例配分方式により仕入れにかかる消費税額を計算する場合には、当該課税仕入れ等の税額に課税割合を乗じて計算した部分の金額が控除される。

 

だめな理由を列挙します。

・直前が仕入税額控除の問題という認識があれば、このような解答にいたらないはず。
・調理業務に言及がない。
・致命傷は、委託業務を支払と限定し、委託業務の売上部分を見落としている点です。売上は、課税になるということを完全に見落としているため、当該課税仕入れ等の税額は控除されないと言い切った部分。
・仕入税額控除は、本設問の中心テーマではない。設問は、委託業務の支払いについて問われている問題ではない。

この問題を解くための前提をお話します。

まずは、下記文部科学省が出した照会をしっかり理解することからです。

https://youchien.com/info/news/archives/_data/070402_qa.pdf

 

食育、安全確保というキーワードで否定しにくく照会をした結果、国税庁はOKと言ってくれました。
言ってくれたのですが、国税庁のホームページからは、この照会は削除されてしまったのです。
これを曲解して非課税にする実務例が多くなり削除されたものと思います。

曲解して非課税にした例を本設問で作成してみました。

 

老人である要介護者は、当然、食事のために一人で外出することもままならず、まして養護なしに、自身で食べることもできない場合もあります。生きていくうえで必要不可欠である食事の提供業務は、居宅サービス、施設サービスの一環として考えられるため介護保険サービスの提供として非課税となる。

 

実務的に、このような解答を作り出す方が出てきたので、国税庁のホームページから削除されたのでしょう。でもこのように逆を考えられないと正解もだせないと思います。
非課税、課税の双方がでる思考でどちらがより正しいか検討していく能力が必要なのです。

だめな理由は、
平成17年以降、栄養管理以外の基本食事サービス費は保険給付の対象から外されてしまったからです。
ここはあくまでも税理士試験です。中立の立場でものを考えられるか、善管注意義務が働くか。主張が自己中心的思考に陥っていないか。何より、きちんとした読解力があるかが試されているのです。

ここまでわかれば、
国税庁のホームページの「非課税取引」の「介護保険サービスの提供」を理解できるはずです。具体化が出来た知識は、きちんと機能するものになるのです。

参考

https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000394648.pdf

介護保険サービスの提供

介護保険法に基づく保険給付の対象となる居宅サービス、施設サービスなど  ただし、サービス利用者の選択による特別な居室の提供や送迎などの対価は非課税取引には当たりません。

 

食事サービスが書かれていない→施設サービス「など」に強引に含まれていると考えるような思考は危険。
送迎がだめとなれば、文部科学省の例を思い出し食事もだめかもと思う思考が大切なのです。

 

解答例

特別養護老人ホームの入所者に対して食事を提供する食事サービスの提供のうち調理業務に係るものは、介護保険法に基づく保険給付の対象となる介護保険サービスの提供になりません。非課税取引にならない以上、課税取引となります。
また、食中毒とかの問題発生した際に、責任を外部の業者にすることも適切でないため預り金処理を実施することも適当ではないです。

参考1

参考条文もしっかり見ながら質疑応答をきっちり見てください。基本問題として位置付けていると思います。

要介護者が負担する介護サービス費用の取扱い

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/08/05.htm

 

「日常生活に要する費用」の取扱い

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/08/06.htm

 

非課税となる「居宅サービス費の支給に係る居宅サービス」の具体的な範囲

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/08/07.htm

居宅サービスにおける利用者負担の交通費等の費用の取扱い

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/08/08.htm

福祉用具貸与に係る取扱い

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/08/09.htm

 

施設サービスにおいて提供される自己選択サービスの取扱い

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/08/01.htm

 

 

 

参考2

基本食事サービス費は、以前は、調理、食材料、栄養管理等から構成されていました。設問に使われている調理業務という言葉も意味がある言葉だったのです。読み落とさないようにしてください。
預り金処理は、文部科学省から照会されていた概念です。預り金処理ができるということは、課税の対象から除外できることでしょうが、実務的にできるかは困難な論点です。1年間分を預かりその金額をそのまま支払うということはすごく難しい話なのです。預り金とは預かったものをそのまま渡すという概念なのです。食材料ならまずできないでしょう。食材費は天候などにより日々変動するからです。調理費はできるようにも見えますが、消費税率のアップや何より責任主体を外部に移すことは入所者の親族からも信頼や同意は得られないと思います。
設問が、「です・ます調」で書かれているので、「です・ます調」で回答するようにしてください

 

参考2

幼稚園における給食の提供及びスクールバスの運用に係る消費税の取扱いについて(照会)

平成19年1月17日

国税庁課税部消費税室長 殿

文部科学省初等中等教育局幼児教育課長

1 給食の提供について

幼稚園は、「幼児を保育し、適当な環境を与えて、その心身の発達を助長する」ことを目的としている(学校教育法第77条)が、幼稚園における食育の推進の観点から、本職において「幼稚園における食育の推進について」(平成19年1月17日付18初幼教第9号)を通知したところである。

このような食育の推進の観点から提供される給食は、当該幼稚園における教育(保育)活動として一体的に行われるものであるため、給食に掛かる経費についても教育(保育)の実施に必要な当然の経費として、授業料(保育料)と一体的に徴収することが実態に即しているものと考えられる。

現在、幼稚園においては、授業料(保育料)とは別途に給食(食事)の提供の対価として給食代を徴収していることから、消費税が課税されているが、上述のとおり、給食に係る経費は、食育の観点から教育(保育)の実施に必要な経費であるため、授業料(保育料)として徴収することとする場合、このような給食に掛かる経費が含まれている授業料(保育料)については、その全体が消費税法別表第一第十一号にいう「授業料」に該当すると解釈してよろしいか、お伺いしたい。なお、この場合において給食に掛かる経費について授業料(保育料)で賄っている旨の表示等を行うこととしても特段の問題がないと考えるが、併せてお伺いしたい。

また、外部搬入に係る給食代については、幼児の保護者から当該外部搬入に係る取引先に対する代金として前述の授業料(保育料)と明確に区分して幼稚園が収受し、当該代金を預かり金等として処理している場合の当該代金は、幼稚園における資産の譲渡等の対価の額に含めないものとして差し支えないか、お伺いしたい。

 

2 スクールバスの運用について

最近登下校時に幼児等が事件や事故に巻き込まれる事態が生じており、通園時の安全確保が求められていることから、先に「登下校時における幼児児童生徒の安全確保について」を通知し、登降園時の幼児等の安全管理の徹底を要請したところである。さらに、本職において「幼稚園におけるスクールバスによる安全確保の推進について」(平成19年1月17日付18初幼教第10号)を通知し、徒歩では通園できない幼児の安全確保の手段として幼稚園の運営に必要な設備であるスクールバスにより、安全確保に努めるよう要請したところである。

現在、遠隔地等に居住する幼児の送迎の対価として収受するスクールバス代については、消費税が課税されているが、上述のとおり、登降園児の幼児を巡る事件、事故が多発しており、幼児の安全確保の観点からスクールバスの運用は遠隔地等に居住する幼児にとって欠かせないものとなっている。また、スクールバスは、園外活動等を実施する場合の移動手段としても使用するものであり、幼稚園の設備として重要な機能を果たすものである。そのため、スクールバスの維持・運用のために必要な費用を算定し、施設設備費として徴収する場合の当該施設設備費については、消費税法別表第一第十一号にいう「施設設備費」に該当すると解釈してよろしいか、お伺いしたい。この場合において、施設設備費よりスクールバスの運用を行っている旨の表示等を行うこととしても特段の問題がないと考えるが、併せてお伺いしたい。

なお、このようなスクールバスによる安全確保は、幼児が未就学年齢であることに起因するものであり、幼児教育固有の必要性から実施するものであることを申し添える。

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