第64回 法人税法 税理士試験 第2問 解答速報 棚卸資産

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第64回法人税法第2問棚卸資産


低価法による評価損(法29 令28)と資産の評価損(法33)の識別を問われた問題
選定が必要な評価損と不要な評価損の識別ができるか?


棚卸資産のうち、原材料について次のことが判明した。
K材料3,510,000円は、甲社製品の仕様変更により、今後、製造工程に投入されることはないため、転売するしか処分の方法はない。相場の回復も見込まれないことから、取得価額の40%相当額の低価評価損を計上し、原材料勘定から減額した後の金額を計上している。


損金の額になるのかならないのか?
■ 損金の額に算入できる解答例
K材料は甲社製品の仕様変更により、今後、製造工程に投入されることはなく、転売するしか処分の方法はない価格の回復も見込まれないため低価評価損についての調整は不要である。
一見よさげに見えますがあってないと思います。

■ 選定なしには損金の額にはならない
・著しい下落は50%以上なくて著しいとなるのか?
・基本通達9-1-4は、材料について適用はあるのか?
・仕様変更での材料自体に評価損が認められるのか?

→低価法の適用ならば可能だが評価損はできない。
→先入先出法による原価法(会計的には低価法を包括)を採用しているが、税務上は先入先出法による原価法による低価法を選定していないと低価評価損は認められない。

低価評価損と評価損の識別ができるかを問われている論点です。
損金の額にはならないという解答が出せるように棚卸資産評価基準を踏まえ検討できるようにしてください。

また、製品や商品以外の棚卸資産。具体的には材料や仕掛品に低価法の承認申請を実施すると税務署等から理由を問われることもあるはずです。明確な理由がなければ材料や仕掛品を除いて承認申請を実施しているケースも多いはずです。材料や仕掛品に低価法が起こりうることは起きにくい業種もあるかもしれません。
監査会計実務では仕掛や材料であろうと低価法を測定するノウハウは出来上がっています。監査会計の視点もあれば、
「開発中の製品は受注金額を上回ることも起こりうること」
「投入されず長期滞留在庫になることも想定されること」等の理由も解答でき不用意に材料や仕掛品の承認申請を拒まれることもなくなるはずです。
問われる点は非常に高度だと思います。似ている言葉をつなげて作った解答は課税実務上は非常に大きなリスクになります。

根拠法令等
●4.棚卸資産

(資産の評価損の計上ができる事実)
令第68条
 
法第33条第2項 (特定の事実が生じた場合の資産の評価損の損金算入)に規定する政令で定める事実は、物損等の事実(次の各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に定める事実であつて、当該事実が生じたことにより当該資産の価額がその帳簿価額を下回ることとなつたものをいう。)及び法的整理の事実(更生手続における評定が行われることに準ずる特別の事実をいう。)とする。
一  棚卸資産 次に掲げる事実
イ 当該資産が災害により著しく損傷したこと。
ロ 当該資産が著しく陳腐化したこと。
ハ イ又はロに準ずる特別の事実


(棚卸資産の著しい陳腐化の例示)
9-1-4 

令第68条第1項第1号ロ《評価損の計上ができる著しい陳腐化》に規定する「当該資産が著しく陳腐化したこと」とは、棚卸資産そのものには物質的な欠陥がないにもかかわらず経済的な環境の変化に伴ってその価値が著しく減少し、その価額が今後回復しないと認められる状態にあることをいうのであるから、例えば商品について次のような事実が生じた場合がこれに該当する。(昭55年直法2-8「三十一」、平17年課法2-14「九」により改正)
(1) いわゆる季節商品で売れ残ったものについて、今後通常の価額では販売することができないことが既往の実績その他の事情に照らして明らかであること。
(2) 当該商品と用途の面ではおおむね同様のものであるが、型式、性能、品質等が著しく異なる新製品が発売されたことにより、当該商品につき今後通常の方法により販売することができないようになったこと。

(棚卸資産について評価損の計上ができる「準ずる特別の事実」の例示)
9-1-5 
令第68条第1項第1号ハ《棚卸資産の評価損の計上ができる事実》に規定する「イ又はロに準ずる特別の事実」には、例えば、破損、型崩れ、たなざらし、品質変化等により通常の方法によって販売することができないようになったことが含まれる。(平12年課法2-19「十三」、平17年課法2-14「九」、平19年課法2-3「二十一」、平21年課法2-5「七」により改正)


(棚卸資産について評価損の計上ができない場合)
9-1-6 
棚卸資産の時価が単に物価変動、過剰生産、建値の変更等の事情によって低下しただけでは、令第68条第1項第1号《棚卸資産の評価損の計上ができる事実》に掲げる事実に該当しないことに留意する。(平12年課法2-19「十三」、平17年課法2-14「九」により改正)

(時価)
5-2-11 

棚卸資産について低価法を適用する場合における令第28条第1項第2号《低価法》に規定する「当該事業年度終了の時における価額」は、当該事業年度終了の時においてその棚卸資産を売却するものとした場合に通常付される価額(以下5-2-11において「棚卸資産の期末時価」という。)による。
(注) 棚卸資産の期末時価の算定に当たっては、通常、商品又は製品として売却するものとした場合の売却可能価額から見積追加製造原価(未完成品に限る。)及び見積販売直接経費を控除した正味売却価額によることに留意する。

【解説】
1  平成19年度の税制改正により、棚卸資産の期末評価について低価法を適用する場合における棚卸資産の評価額が「当該事業年度終了の時におけるその取得のために通常要する価額」(いわゆる再調達原価)から「当該事業年度終了の時における価額」に改められた(令28①二)。
 「当該事業年度終了の時における価額」とは、いわゆる時価のことであり、一般的には正常な条件により第三者間で取引されたとした場合における価額と解されている。
 そこで、本通達において、棚卸資産について低価法を適用する場合における「当該事業年度終了の時における価額」は、当該事業年度終了の時においてその棚卸資産を売却するものとした場合に通常付される価額であることを明らかにしている。

2  企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」(平成18年7月5日企業会計基準委員会)(以下「棚卸資産会計基準」という。)においては、通常の販売目的(販売するための製造目的を含む。)で保有する棚卸資産の期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とすることとされている。この「正味売却価額」とは、売価(購買市場と売却市場とが区別される場合における売却市場の時価)から見積追加製造原価及び見積販売直接経費を控除したものをいう(棚卸資産会計基準5)。
 本通達の「棚卸資産を売却するものとした場合に通常付される価額」は、棚卸資産を商品又は製品等として売却するものとした場合において見込まれる売却価額であるから、通常は、この「正味売却価額」によることとなる。本通達の注書においてこのことを明らかにしている。

3  ところで、棚卸資産会計基準では、正味売却価額の算定に当たり、売却市場において市場価格が観察できないときには、合理的に算定された価額を売価とし、これには期末前後での販売実績に基づく価額や契約により定められた一定の売価を用いる場合を含むこととされている(棚卸資産会計基準8)。法人がこのような方法により合理的に算定された金額を棚卸資産の期末評価額として低価法を適用している場合には、税務上も、当該期末評価額は法人税法施行令第28条第1項第2号の「当該事業年度終了の時における価額」として取り扱われよう。

4  さらに、棚卸資産会計基準においては、企業の会計実務を考慮して、製造業における原材料等のように再調達原価(購買市場の時価に、購入に付随する費用を加算したものをいう。)の方が把握しやすく、正味売却価額がその再調達原価に歩調を合わせて動くと想定される場合には、継続して適用することを条件として、再調達原価(最終仕入原価を含む。)によることができることとされている(棚卸資産会計基準10)。
 製造業における原材料等のように製造工程に投下されていない棚卸資産については、未だ新たな付加価値が付与されていないことから、当該原材料等の棚卸資産の正味売却価額はその最終仕入価額や再調達原価とおおむね一致するものと考えられる。したがって、税務上も、法人がこのような棚卸資産に限り、いわゆる再調達原価により算出した金額を当該棚卸資産の期末評価額として低価法を適用している場合であっても、これを法人税法施行令第28条第1項第2号の「当該事業年度終了の時における価額」として取り扱って差し支えないものと考えられる。

5  なお、「棚卸資産を売却するものとした場合に通常付される価額」は、棚卸資産を商品又は製品等として売却するものとした場合において見込まれる売却価額であるから、資産の評価損益の計上を行う場合における時価である「当該資産が使用収益されるものとしてその時において譲渡される場合に通常付される価額」(法人税基本通達4-1-3、9-1-3)や、スクラップ等としての処分価額とは異なることとなる。

棚卸資産評価基準
通常の販売目的で保有する棚卸資産の評価基準
7.通常の販売目的(販売するための製造目的を含む。)で保有する棚卸資産は、取得原価をもって貸借対照表価額とし、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額もって貸借対照表価額とする。この場合において、取得原価と当該正味売却価額との差’額は当期の費用として処理する。

8.売却市場において市場価格が観察できないときには、合理的に算定された価額を売価とする。これには、期末前後での販売実績に基づく価額を用いる場合や契約により取り決められた一定の売価を用いる場合を含む。

9.営業循環過程から外れた滞留又は処分見込等の棚卸資産について、合理的に算定された価額によることが困難な場合には、正味売却価額まで切り下げる方法に代えて、その状況に応じ、次のような方法により収益性の低下の事実を適切に反映するよう処理する。
(1) 帳簿価額を処分見込価額(ゼロ又は備忘価額を含む。)まで切り下げる方法
(2) 一定の回転期間を超える場合、規則的に帳簿価額を切り下げる方法

10.製造業における原材料等のように再調達原価の方が把握しやすく、正味売却価額が当該再調達原価に歩調を合わせて動くと想定される場合には、継続して適用することを条件として、再調達原価(最終仕入原価法を含む。以下同じ。)によることができる。

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