■法人税法 第62回 第一問 問1解明のために

■法人税法 第62回 第一問 問1解明のために

■第62回 第一問 問1 売上原価及び費用・損失

 

砕石及び土木工事を主体とする建設業を営む3月末決算の内国法人であるA株式会社(以下「A社」という。)は、次の①及び②により採取した岩石を販売している。A社の当期(平成24年4月1日から平成25年3月31日までの事業年度をいう。)における岩石の売上高は500,000,000円であった。

 

① 平成24年4月に土地所有者Bとの間で、年間50,000,000円の賃料を支払ってその有する土地から岩石を採取し、採石後はその跡地に盛土及び植林をして返還するという内容の契約を締結した上で、同月から採石を開始した。

地質調査を専門とするC株式会社(以下「C社」という。)の見積りによれば、採石予定総量は1,000,000トン、採石に要する期間は10年、採石後の盛土及び植林に要する費用は1,000,000,000円と見込まれている。なお、当期における採石量は100,000トンであった。

 

② 平成24年10月に、自ら岩石を採取するための土地を900,000,000円で取得し、同月から採石を開始した。

C社の見積りによれば、採石予定総量は600,000トン、採石に要する期間は8年、採石後のこの土地の価額は100,000,000円と見込まれている。なお、当期における採石量は30,000トンであった。

 

以上の取引に関し、A社が当期の益金の額及び損金の額に算入すべき金額について、どのような処理が考えられるか。考えられる処理方法を、理由を付して簡潔に説明しなさい。

なお、上記の事項以外については考慮する必要はない。

 

2.解答

 

【益金の額】

当期の益金の額に算入すべき金額は、岩石の売上高500,000,000円である。

 

【損金の額】

①の取引

(処理案1)

当期の損金の額に算入すべき金額は、土地の賃料50,000,000円である。

 

(理由)

岩石を採取するための土地の賃料50,000,000円は、岩石を売上げるためにに直接貢献しているため売上原価に算入する。採石後の跡地に盛土及び植林に要する費用は、事後的費用であるため売上原価に算入されない。よって売上原価として当期の損金の額に算入すべき金額は、土地の賃料50,000,000円である。

 

(処理案2)

当期の損金の額に算入すべき金額は、土地の賃料50,000,000円と採石後の跡地に盛土及び植林に要する費用の当期対応額100,000,000円との合計額150,000,000円である。

 

(理由)

岩石を採取するための土地の賃料50,000,000円は、岩石を売上げるためにに直接貢献しているため売上原価に算入する。跡地に盛土及び植林をして返還する費用の当期対応分100,000,000円は、岩石の販売価額にも転嫁され、収益・費用対応の関係からみて、より合理的であるため売上原価に算入する。よって売上原価として当期の損金の額に算入すべき金額は、土地の賃料50,000,000円と採石後の跡地に盛土及び植林に要する費用の当期対応額100,000,000円との合計額150,000,000円である。

※利益操作の余地もあるので継続適用となる。

※1,000,000,000円×100,000トン/1,000,000トン=100,000,000円


②の取引について

(処理案1)

当期の損金の額に算入すべき金額はない。

 

(理由)

土地は非減価償却資産であるため。

 

(処理案2)

当期の損金の額に算入すべき金額は、岩石採取量に応じた額40,000,000円である。

 

(理由)

岩石採取用の土地については、その岩石部分も含めて対価を支払っているため、岩石部分について生産高比例法に準ずる方法により計算した当期対応分40,000,000円は売上原価に算入されることになる。よって売上原価として当期の損金の額に算入すべき金額は、岩石採取量に応じた額40,000,000円である。

※通常の売上原価のように進んで原価算入を認めることをしていないので40,000,000円以内の金額を損金経理した場合に認められる。

※(900,000,000円-100,000,000円)×30,000トン/600,000トン=40,000,000円

 

 

3.国税庁の意図

 

法人税法第22条では、その第1項において、「各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする」と定められ、益金の額及び損金の額については第2項以下に規定が置かれている。そして、同条第3項において、当該事業年度の損金の額に算入すべき金額として、①当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額、②当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額、③当該事業年度の損失の額、が掲げられている。

問1は、建設業を営む法人が採石地を賃借又は取得して採取した岩石を販売するという事例を題材に、売上原価及び費用・損失についての理解と考え方を問うものである。

以上、いずれも法人税法における基本的な制度に関し、具体的な事例への適用についての問いかけを行い、法令等を正しく解釈・適用することができるかどうかという能力を問うこととしている。

 


復興のために道路整備や建物建築のためにコンクリートが必要になる。震災の翌年に出題された問題である。

基本通達の2-シリーズは、第59回と第60回に出題され、基本通達の7-シリーズは、第61回に出題されていたが、第62回は、2-シリーズと7-シリーズ接点になる部分が出題された。通達の知識も大切かもしれないが、損金概念をしっかり持っているかが問われた問題になっている。

 

適性な期間損益計算上は、原価として計上していくものであるが、今回の出題は、見積もりと見込が入り込んでいる。状況を読み取り杓子定規に税法の考え方を貫けば課税上にも弊害がでることを感じ取れるかがまずは突破口になる。

 

蛇足だが、国際会計基準が適用されれば、今までのようにルールは激減する。覚える会計から考える会計に変化する。見積もりや見込がどんどん増えていくことをも想定した問題である。知識より考え方を鍛えると思いひとつひとつの通達で能力を磨くようにすること。

 

 

4.参考・前提知識

 

試験に関連する通達を記載している。ていねいに読んで税法の考え方もしっかり吸収すること。

 

 

(砂利採取地に係る埋戻し費用)

2-2-4

法人が他の者の有する土地から砂利その他の土石(以下2-2-4 において「砂利等」という。)を採取して販売(原材料としての消費を含む。)する場合において、当該他の者との契約によりその採取後の跡地を埋め戻して土地を原状に復することを約しているため、その採取を開始した日の属する事業年度以後その埋戻しを行う日の属する事業年度の直前の事業年度までの各事業年度において、継続して次の算式により計算した金額を未払金に計上するとともに当該事業年度において当該土地から採取した砂利等の取得価額に算入しているときは、その計算を認めるものとする。

 

 

 

 

 

(注)1 本文の「採取を開始した日の属する事業年度」、「埋戻しを行う日の属する事業年度」、「直前の事業年度までの各事業年度」及び算式の「当該事業年度前の各事業年度」は、その事業年度が連結事業年度に該当する場合には、当該連結事業年度とする。

2 算式の「埋戻しに要する費用の額の見積額」及び「当該土地から採取する砂利等の予定数量」は、当該事業年度終了の時の現況により適正に見積るものとする。

3 適格組織再編成が行われた場合の合併法人等における本通達の適用については、被合併法人等の本通達による計算を引き継ぐものとする。

 

解説 

⑴ 公共の河川敷等における砂利採取に代わって、川敷以外の民有地から砂利を採取するという事例がある。このような場合には、むろんその土地の所有者等との間で契約を締結し、採取に伴う対価を支払う一方において、採収後の跡地を埋め戻して土地を原状に復することを約している例がほとんどであろうと思われる。

この場合の埋戻しはむろん砂利採取が終わった後におこなわれることになるので、砂利の採取と跡地の埋戻しとを別個の問題と考えれば、砂利の採取及び販売(原材料としての消費を含む。以下同し)の時点においては、その採取のための費用のみがその取得原価となり、その後の埋戻し費用は採取及び販売の終わった後における事後的費用として損金計上すべきであるということとなる。

しかしながら、一般にこのような場合の跡地の埋戻し費用は、相当多額になるはずであり、砂利採取業者は当然そのことを見越して砂利の販売価額等を定めることになるであろうから、埋戻し費用を見積ってその取得原価として計算することが収益・費用対応の関係から見て、より合理的であることは言うまでもない。

本通達においては、このような観点に立って、民有地から砂利の採取を行う揚合に、契約に基づいてその跡地の埋戻しをすることが義務付けられているときは、砂利採取の進行に応じて費用を見積もり、これをその採取した砂利の取得原価に算入することが認められている。

この場合の毎期の採取量に応ずる埋戻し費用の見積額は、本通達に定める算式により計算することになるのであるが、この場合の考え方は、毎期末の現況に基づき、かつ、既往の見積違いを当期以後の採取量にチャージする形で修正しながら毎期の見積計上額を算定するというものである。

なお、本通達の取扱いは必ずしも民有地から砂利を採取する場合のみに限定されていないから、河川敷等の公有地から砂利を採取する場合でも、その跡地の埋戻しが契約上義務付けられている場合には同様に取り扱われることになる。

⑵ また、法人が砂利採取地そのものを自らの所有地とした上で採取する場合にも埋戻し費用の見積計上が認められるのかどうかという問題がある。この点については、他人の土地から採取する場合には、契約によりその埋戻義務がきわめて明確であるが、自己の土地の埋戻しについては、あらかじめ埋戻義務が確定しているというような関係にはないから、これについて埋戻し費用の見積計上をすることは認められないと解される。

⑶ ところで、砂利等の採取中に組織再編成が行われた場合には、その砂利等の取得価額の計算をどのように行うのか疑問が生じるところである。この点、平成13年度の税制改正により整備された組織再編成に係る税制においては、適格組織再編成により資産等の移転を行った場合には、その移転資産等を帳簿価額により引き継ぎ、又は帳簿価額により譲渡したものとすることにより譲渡損益の計上を繰り延べることとされている。

このため、砂利等を2以上の事業年度にわたって採取する場合のその砂利等の取得価額の計算にあっても適格組織再編成により資産等の移転を行ったときには、その計算を引き継ぐことが実態にあったものと言える。

そこで、本通達の(注3)において、この適格組織再編成が行われた場合の合併法人等における本通達の適用については、被合併法人等の本通達による計算を引き継ぐものとすることが明らかにされている。

 

 

(土石採取用土地等の償却)

7-6-3 

土石又は砂利を採取する目的で取得した土地については、法人がその取得価額のうち土石又は砂利に係る部分につき旧生産高比例法又は生産高比例法に準ずる方法により計算される金額以内の金額を損金の額に算入したときは、これを認める。

 

解説 

土地は一般的には非減価償却資産であるが、土石又は砂利採取用の土地については、その土石又は砂利部分を含めて対価を支払っているので、その部分については旧生産高比例法又は生産高比例法に準ずる方法により、その採取量に応ずる損金算入を認めることとされている。もっとも、これは法人が損金算入の経理をした場合に認めるものであり、一般の売上原価のように税務上進んで原価算入を認めることはしていない。

なお、この計算の基礎となる「その取得価額のうち土石又は砂利に係る部分」とは、例えば、土石を採取することにより一般宅地となってかえって地価があがる場合もあり、一概にいうことはできないが、一つの方法としては、砂利の場合、その取得価額から砂利採取後の土地の価額を控除した金額によることが考えられる。この揚合、この砂利採取後の土地の価格が不明なときは、埋戻し後に見積もられる価額からその土地を原状回復するため埋戻しに要する費用を控除した金額を砂利採収後の土地の価額として計算することもできると考えられる。

 

5.補足説明

 

⑴ 採石後の盛土及び植林の費用100,000,000円の取扱い

違和感を感じる力をつけること。

当期は500,000,000円の売上、来期からは、600,000,000円以上の売上が想定されて原価になるのは50,000,000円のみ。これで、毎年税金を支払い8年後に、土地の売却損800,000,000円計上し、10年後に盛土、植林費用を100,000,000円計上する。税法の持つ原則の考え方はわかるが、何かあると思うことがまずは大切な感覚になる。

盛土及び植林を行い返還する費用100,000,000円は契約により義務づけられていること、販売の際にはその費用を販売価額に転嫁することが想定されること、収益と費用の対応の関係から見てより合理的なことを違和感かららスタートして感じとる力につなげていくこと。けっして知識問題としての出題でないのはあきらかです。

 

⑵ 取得価額の使い方について

 

棚卸資産の取得価額は、購入(デリバティブ取引によるものを除く。)の場合は、購入代価(購入費用の額を加算した金額)とその棚卸資産を消費し又は販売の用に供するために直接要した費用の額との合計額と規定されている。

棚卸資産の取得価額と規定されているが、期中購入の場合これを棚卸資産に計上するか、原価に計上するかを考えれば、会社の経理処理に合わせることになる。通常の販売業なら購入費用含めて原価(仕入)に計上し、期末に在庫として残っているものに購入費用等を配賦して棚卸資産を計上する。建設業のように最初に棚卸資産に計上するならば売上に対応するものを原価に落としていく処理をすることになる。柔軟に考えられるように通達も読むこと。

 

また、次の通達も柔軟に読むこと。

参考

(原価に算入された交際費等の調整)

61の4(2)-7

法人が支出した交際費等の金額のうちに棚卸資産若しくは固定資産の取得価額又は繰延資産の金額(以下61の4(2)-7において「棚卸資産の取得価額等」という。)に含めたため直接当該事業年度の損金の額に算入されていない部分の金額(以下61の4(2)-7において「原価算入額」という。)がある場合において、当該交際費等の金額のうちに措置法第61条の4第1項の規定により損金の額に算入されないこととなった金額(以下61の4(2)-7において「損金不算入額」という。)があるときは、当該事業年度の確定申告書において、当該原価算入額のうち損金不算入額から成る部分の金額を限度として、当該事業年度終了の時における棚卸資産の取得価額等を減額することができるものとする。この場合において、当該原価算入額のうち損金不算入額から成る部分の金額は、当該損金不算入額に、当該事業年度において支出した交際費等の金額のうちに当該棚卸資産の取得価額等に含まれている交際費等の金額の占める割合を乗じた金額とすることができる。

(注) この取扱いの適用を受けた場合には、その減額した金額につき翌事業年度(その事業年度が連結事業年度に該当する場合には、翌連結事業年度)において決算上調整するものとする。

 

 

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